「ウィークリー出版情報4月号」掲載

実践ゲノムの最前線

「実践ゲノムの最前線」

井村裕夫監修
高岡裕ほか編集

六然社刊
3780円
ISBN 978-4-901609-26-5

  最先端を俯瞰する「ゲノム医療」入門書

 最近、「テーラーメイド医療」という言葉をときどき耳にするようになったが、そ の中味をご存じだろうか。
 2003年にヒトゲノム解読が完了して以降、ゲノム研究は飛躍的な進歩を遂げ た。その成果の一つとして、ある特定の病気に対してかかりやすい人とかかりにくい人がいること…、ある薬に対する効き目が人により大きく異なり、特定の患 者には重篤な副作用をもたらす…、こうした差異が個々人の遺伝子によって決められていることが分かってきた。

 そこで、万人向きの治療ではなく、患者一人一人の遺伝的体質にぴったり合った医 療を提供しようというのが、テーラーメイド(オーダーメイド)医療であ る。いわば「ゲノム医療」と言うこともできよう。すでに、がんやリウマチといった疾患では臨床的な研究が進められているという。
 「ゲノム医療」の難しさは、多くの専門分野の研究統合が欠かせないところにある。医学、生物学、薬学はもとより応用数学、情報学、統計学、工学、コン ピュータ科学など専門知識の統合の上に、はじめて成立する医療だからである。したがって、異分野融合の視点を持つ「ゲノム医療」専門家の育成が急務となっ てくる。


こうした要請に応えて、「クリニカル・ゲノ ム・インフォマティクス」(ゲノム医療情報学とでも訳せ るだろうか)と銘打った講座が、神戸大学と先端医療振興財団によって、ここ数年にわたり開かれてきた。(実は、昨年の12月と今年の1月、筆者は縁あっ て、このセミナーを聴講する機会に恵まれた。)本書は、その講義内容をまとめたものであり、「ゲノム医療」人材養成のための最新の教科書である。

 書名の「実践ゲノム」は、単なる基礎研究ではなく、医療への応用、つまり臨床に 重きを置いていることを示し、また「最前線」は、最新情報を提供するだけでなく、新領域を目指す人たちへの学習設計図を明確にしようとするものであろう。
 ここには、実に多種多様な先端的研究や研究のための方法論が紹介されている。そ れらに共通する特長を上げるとすれば、すべて研究者本人が記述していること、専門を異にする人にも分からせようとする配慮と努力が感じられることなどであ る。また個人情報保護や情報システムのセキュリティまで、留意すべき問題を行き届いて俯瞰しているのもいい。
(個人的には、小さいながらも索引が付いてい るのに好感を持った。) 

(菅野 匡夫・詩人)


日 販図書館サービス
「ウィークリー出版情報」
 2009年4月3週号掲載



日販図書館サービス様と書評を書かれた菅野匡夫様のお許しを得て、紹介させて頂いています。